TPECで何が出来る

■ TPECは産総研が企業との間で従来行ってきた、個社ごとに「大学・国研と共同研究する」ことからもう一歩踏み出し、産総研を「共同研究(企業間連携)のハブ」として活用し、適正なコストシェアの下で、リスクの高いラディカルイノベーションに挑戦する新たな制度です。

TPECの性格

 そのために、産総研は関連する技術職員や技術スタッフの知識とスキル、及び基幹研究施設・設備(デバイス試作ライン、実装試作ライン、ウェハー一貫プロセス装置群を中心に、所内共用設備を含む)を提供すると共に、各種共同研究契約、取り決め、施設維持等の総合調整事務を担います。TPECでは他の技術開発コンソーシアムでは見られないユニークな制度を取り入れています。まず第1は、企業の研究者を産総研職員とほぼ同じ立場(外来共同研究者ではある程度の制約が存在する)で活動できる待遇で受け入れる「特定集中研究専門員」制度です。この制度は、技術移管の際には通常行われる文書ベースのやり取りとは異なり、人材を介したより効率的な技術移管手法となるに留まらず、当該技術分野での人脈形成にも大きく資するものです。第2は知財管理に関する点ですが、TPECで創成された特許、ノウハウ、更には特定の作業手順をまとめたレシピなどの知財は、そのプロジェクトに関連した参画者の共有を基本として登録した上でTIAパワーエレクトロニクス拠点に蓄積されます。有効活用の観点からTPEC参画研究者は、当該拠点において行われる技術開発の範囲内ではそれを対価なく活用することができます。更にこれらの特許やノウハウは、保有者でなくても然るべき条件(例えば、保有者に実施の意志がなく、他者の実施に同意した場合など)の下ではTPECの他参画者が活用することも可能としており、参画者の間のwin-win関係を保った上で、創成された技術が「塩漬け」状態になることを回避して我が国全体の産業技術向上に資するように運用しています。TPECの施設/設備を活用した試作品に関しては、作成された試作品を自社へ持ち帰ることができる柔軟な制度も用意されています。TPECの最新デバイスチップを搭載した回路開発などへの試供が想定されています。また、関連技術分野の動向に関して、参画メンバー研究者を対象とした技術セミナーも適宜開催しています。

 これらの制度をうまく活用することにより、参画者は新技術開発に伴う技術リスクと事業リスクを共同開発により軽減しながら、重複投資を回避し、最速かつ最低のコストでイノベーションを創出することが可能となります。また、関連技術分野における人材育成、知識の獲得、及び、それらを活用したビジネスモデル構築を早期に進められます。有る企業の役員の方からは、TPEC参画は単独で技術開発を進めた場合と比較して数倍の投資効果があった、とのコメントを頂いたこともあります。