2023年度 エレクトロニクス実装学会 論文賞受賞
TPECの成果が、2023年度 エレクトロニクス実装学会 論文賞を受賞いたしました。
『 SiCモジュール225℃動作時におけるパワーサイクル長寿命化 』 |
田中 聡,新開 次郎,宝藏寺 裕之,加藤 史樹,池川 正人,佐藤 弘,倉島 宏美 (国立研究開発法人 産業技術総合研究所 先進パワーエレクトロニクス研究センター, 住友電気工業株式会社 パワーデバイス開発部) |
エレクトロニクス実装学会誌 26(3)275-282(2023) |
推薦文
炭化ケイ素(SiC)を始めとするワイドバンドギャップ半導体を用いたパワーデバイスが,カーボンニュートラル社会の構築に向けた電力ネットワークの高効率化の実現,運輸部門の電動化の推進に必要な中核的基盤技術の1つとなってきている。
現在パワーデバイスとして広く用いられているシリコンIGBTは、デバイス動作時の上限温度が175℃という材料限界を有する。これに対し、SiC材料を用いたデバイスを採用することにより、この壁を越え、200℃での動作が実現しつつある。本論文では、さらに一段高い225℃での動作実現に取り組み、高信頼性用途での採用基準である30万回を超えるパワーサイクル試験寿命を実証した。
具体的には、SiCデバイス・チップ上面にCu-Invar-Cuからなる緩衝板を銅焼結材により接合し,線膨張率をSiCより小さい範囲に設計することにより,接合温度65-200℃試験において47.2万回,65-225℃試験において42.5万回の寿命を実現した。従来は,チップ表面の電極層あるいは配線材料に用いられるアルミ材料内でのクリープ疲労による故障が課題であったが,開発した技術によりこれらを抑制することに成功した。本開発では、有限要素法による構造解析および過渡熱解析などの材料解析手法を取入れた連成解析により、開発構造の全体最適化のみならず、開発の効率化に取組んだ成果についても報告した。
このように、SiC材料を用いたデバイスの高温動作時のパワーサイクル寿命を実証することにより、本材料が有する高耐圧,高効率という性能を最大限生かすことが可能となり、さらなる用途および需要の拡大、社会実装の加速の契機となる先駆的な取組みである。以上により,本論文に論文賞を贈呈する。