TPECは2022年に設立10周年を迎え、様々な成果が得られてきました。その間に次世代パワエレをとりまく状況は大きく変化してきており、TPECに求められるものも変わってきました。そこで、次の10年の「道しるべ」としてTPECの研究戦略ロードマップを下記のように策定いたしました。この戦略に基づき、TPECは次の10年も我が国のパワエレ産業の発展に貢献いたします。

国内SiC産業 次の10年の研究課題

 国内SiCデバイス産業は、ボリュームゾーンとなる電動自動車や電鉄応用の低~中耐圧クラスデバイスが、「技術成熟フェーズ」を経て事業化に成功しました。しかし依然として爆発的な普及拡大には至らず、次の10年は「普及拡大フェーズ」と位置づけて、主要因であるデバイスチップの低コスト化、低損失化を一層加速させる研究開発が必要と言えます。また並行して、新たな市場創成を目指して高耐圧デバイスなど新技術の「技術成熟フェーズ」の研究開発を本格化させる必要があると考えます。

次の10年 TPECの役割

 TPECの活動範囲は今後拡大します。昨今、国プロは企業主体且つ競争領域の技術開発に移行する傾向にあります。TPECは従来、大型国プロ等の成果を引継ぎ技術成熟度を高め企業へ技術移管してきましたが、今後は非競争領域の共通基盤技術にも注力し、企業での事業化を通じた社会実装を目指します。TPECは、オープンイノベーションによる蓄積ノウハウの水平展開と、ウエハ、デバイス、実装、評価に及ぶ技術の垂直統合を強みとし、研究リソースとリスクの低減、フレキシビリティとスピード感あるテーマ遂行、自由な連携を可能にしています。

普及拡大フェーズ

 普及拡大にはデバイスチップの低コスト・低損失化による「チップ電流単価」の低減が必要です。例えば1200VクラスではSiC-MOSFETのチップ電流単価はSi-IGBTの約3倍と言われ、コストの内訳はウエハ、歩留まりロス、プロセス、エピの順となってます。TPECは競争力の高い基盤技術をスピーディーに開発し、2030年にはチップ電流単価を8インチ換算でSi並みに削減することを目指します。

技術成熟フェーズ

 普及拡大に向けたもう一つの柱は新規市場の創成です。SiCの優位性が際立つ高耐圧、高周波領域へ、またパワーICなど新規技術への展開が期待されます。TPECでは応用開拓とセットで技術開発に取り組むことで、企業の新規市場創成を支援します。

応用開拓

 応用開拓は、機器・システムメーカーと連携し、高耐圧デバイスや新規技術の導入効果を先行して実証することで推進します。国内外と問わず先行するメーカーと積極的に連携します。そのためにデバイス技術だけではなく、モジュール技術の強化にも取り組みます。これらの通じ新規市場の創成、そして国内パワーデバイス産業の活性化を目指します。